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和解のために 2021

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和解のために 2021

1)「帝国の慰安婦」著者が指摘する過去30年で形成された「責任逃れの日本」の背景

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朴裕河・韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日、宮本明登撮影
朴裕河・韓国世宗大教授=東京都新宿区で2020年3月6日、宮本明登撮影

 日本と韓国は、葛藤を乗り越えられないまま、2021年の歩みを始めた。一人の韓国人女性が名乗り出て、慰安婦問題が再発見されてから30年。冷戦終結後の急激な変化の時代にあるべき関係を模索しながらも、いま日韓は最大の不協和音の中にある。「諦め、絶望するのはたやすい。だが次世代のために共存の道を探りたい」――。「帝国の慰安婦」などの著書で知られる韓国・世宗大の朴裕河(パク・ユハ)教授の連載「和解のために 2021」をお届けする(毎月、上・下2回に分けて掲載)。

「学問の政治化」のつけ

 日韓関係の悪化が憂慮されて久しい。日本で首相が代わった時、それをきっかけとして新たな展開を期待する向きもあったが、当分は難しいのではないだろうか。なぜなら、対立している問題をめぐる正確な理解が両国に十分あるとはいえず、しかも問題の所在を共有していないからだ。

 たとえば、日本には日韓関係悪化の原因を文在寅(ムン・ジェイン)大統領に求める傾向がある。そして今の政権が続くうちは、関係改善は難しいとする声が多い。たしかに文大統領は朴槿恵(パク・クネ)大統領の在任の時、両方の外交関係者たちが苦労してこぎつけた日韓合意に基づく「和解・癒やし財団」を解散してしまった。だからといって10億円を返したわけでもなく、合意破棄を宣言したわけでもない。最近韓国では、文大統領があるべき場所にいない、声を出すべき時に姿を現さないとの認識が国民の間に強まっている。そういう意味では、日韓合意をめぐる曖昧な態度はそうしたことの延長線上にあるのだろう。いずれにしても実質的に破棄とも見えるのは当然で(だが、韓国側から見れば、そうした曖昧な態度を外交的駆け引きと評価することも可能だ)、そういう意味では日韓関係回復を願う人々がポスト文政権を待つのは当然のことではある。

 しかし、朴大統領も日韓合意に取り組む直前まで日本の予想・期待を裏切り、厳しい態度だった。つまり保守政権だからといって日本に対する態度ががらりと変わるわけではない。

 そうしたことの背景に植民地支配があると見ている人が多い。そうした認識はもちろん間違いではない。しかしより正確には、植民地支配に向き合う日本像こそが韓国の人々の反感をつくり続ける原因になっている。つまり、「植民地支配」自体よりは「植民地支配をめぐる(日本の態度など)諸認識」が変わってきた結果と見るべきだ。冷戦崩壊後のここ30年の間に起こったこと、そしてそれをめぐる認…

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